事例紹介 | 石巻おばあちゃんの学習塾 <中編>

2011/4.10
まず、学習塾に向かい、簡単に図面を描き、生活のスペックを洗い出してみた。 キッチン、ガス、トイレは十分に使えた。


写真3 古~い元学習塾

建物自体古いものだけど、痛んでおらず、中も掃除をすれば奇麗になりそうだった。 しかし、もともと人が住むために設計してある訳ではなく、風呂やエアコンがない。ここがネックになるだろうと思っていた。 リノベーションが必要な所は馬場先生に相談してみようと思った。

そして、この情報をまとめて、iPhoneから「仮り住まいの輪」に載せた。
それと同時に 避難所をまわることにもした。
自分で手書きのチラシを作り、自転車で物件から近い4ヶ所の避難所を回った。 最初に行った小学校は係員の方が地元の友達のお父さんだったため、説明もすぐに理解し て貰えて、とても感謝された。 しかし、大きい避難所ほど、チラシを貼らせてもらう交渉に時間がかかった。 上の人に許可を取らないと、と言われ何カ所もたらいまわされた後、最終的に市に提出し てくれと言われたりもした。 県外から来た係員さんも多く、なかなか話が通らず、チラシを貼るだけでも一筋縄には行 かなかった。

その後、避難所になっている公民館をまわり、チラシの説明をしている時、公民館に常駐 している政治家の方に話しかけられた。 その方は、僕のことを知っているようだったが、僕は一瞬とまどってしまった。 話をしてみると、その方は私のおじいさんが市会議員をしているときのお弟子さんだった ということ。小さいころの僕を知っている人だった。 そこでその政治家の方に「仮り住まいの輪」のことを説明し、もっと避難所の人に知って もらうにはどうしたらいいか相談したところ、その後いろんなサポートをしてもらえた。

避難所回りを終えて、家に帰ろうとした時、一件目の連絡がある。

宮浦さんという方だった。
宮浦さんはチラシを貼りにいった石巻商業高校の先生だった。 チラシを体育館に貼ろうとして、内容に目を通してすぐに、電話をかけてきたようだ。 今日今すぐに見学に行きたいと言われた時は驚いた。
待ち合わせをして、案内をすることになった。宮浦さんは、自転車でやってきた。50代 くらいの男性だった。 この自転車は大阪から送られてきた放置自転車だと笑いながら話してくれた。家は港の近 くに住んでて、一階は冠水して、奥さんと二階だけで生活している。 車を流されてしまい、職場の高校まで自転車で一時間半かけて通っているそうだ。学習塾 からなら自転車でも20分くらいの距離なので、興味を持ったとのこと。 部屋を案内すると、想像より広かったらしく、驚いている。なにか考えていたようなの で、僕は気に入らなかったのかな、と不安になった。 その後、実は私たち夫婦より大変な生徒がいて、その家族に貸してくれないだろうかと、 話してくれた。
その日はその家族とも奥さんとも相談してみるといって帰られた。

その後問い合わせは続いて3日間で5件来た。 チラシを見て電話してくれる方が多かったが、「仮り住まいの輪」のサイトから問い合わ せてきた方もいた。 風呂もエアコンないのにここまで問い合わせがくるとは正直思っていなかった。それほど 状況は切迫しているということなんだとも思った。

結果的に2番目に見学に来て頂いた布川さんという家族が入居された。
宮浦さん夫婦は自宅を離れることにはしないと決めて、生徒の家族は仮設住居に当選したとのこと。 見学に布川さんは家族全員で来た。 「こんにちわー」と車から元気よく飛び出してきた3人の男の子。さっそく家の周りを走 りまわっている。多少面食らった。 その後、申し訳なさそうに布川さん夫 婦が挨拶してくれた。 奥さんは生後数ヶ月の赤ちゃんを抱い ている。なんとこの子も男の子。 布川さんはこの車、津波でもう廃車寸 前なんだと笑いながら話してくれた。 石巻の人間は強い人が多い。


写真4 いきなり家の前の道 路で遊ぶ子供達


写真5 布川さんの家があった小渕浜

布川さん一家は牡鹿半島で漁師をされている。
家を全て流され、避難所生活をしていたが、子供が小さな男の子4人で、避難所の共同生 活は大変苦労してたようだ。 おばあさんがまだ見つかっておらず、毎日避難所から捜索しに海まで通っている。
そんな中仮り住まいの輪をチラシで知り、問い合わせて来てくれた。 話をしてみると布川さんの妹さんが東北芸術工科大学の卒業生だとかで盛り上がった。い ろんなところで繋がっているものだ。 職場からは遠いけど、子供の通う小学校に近いから、ここに興味を持ったとのこと。 奥さんは海の近くはもう嫌で、山間のこの集落なら安心できると言っていた。
家の中を案内してるときに僕らは壁にネズミの穴 を発見してしまった。
僕は一瞬焦ったが、布川さんは何故かとても喜んでいる。
「ネズミがいる家は安全な良い家ってことだから」そう言った後、「お願いします。ここを貸して下さい。」

もしかしてネズミが決めてだったのかもしれな い。


写真6 学習塾の名残の黒板

布川さんに貸す物件は元々学習塾だったので、お風呂がない。
リノベーションして造ることは出来る。しかし、家主のおばあさんがお金を出すことは出 来ないため、布川さんに負担して貰うことになる。 そうなると入居期間の問題が出て来てしまう。布川さんは仮設住宅も申し込んでいるた め、入居期間が不確定だ。 お金を出して貰ってお風呂を造っても、もしかしたら、三ヶ月しか入居しないなんてこと になるかもしれない。 お風呂を造るべきか、何か良いやり方があるか、大工さんと話し合った。 その後、布川さんの意向でお風呂は造ることになった。大人は2、3日風呂に入らなくて も大丈夫だけど、子供は肌荒れしてしまうそうだ。 しかし、また問題が出てきた。当時、石巻にはボイラーがなかった、浴槽もない。おそら く仮設住居に全て回っているのだろう。 大工さんがいろんな所に電話してくれたがなかなか厳しそうだ。 石巻にはまだまだ足りないものがあるというのを実感した。

ここまでチラシを貼ってからあっという間だ

その後の手続きも一筋縄ではいかなかった。 サイトからガイド用紙をダウンロードするにもweb やプリンタのある所を探しに行ったり、免許証のコ ピーを取ろうと思っても、船ごと流されて無くなっ てしまっていた。


写真7 引っ越し!

なんとか契約手続きを苦戦しながら終え、 子供達と一緒に引っ越しを手伝ったり、隣 の家に挨拶まわりに行ったりした。 すぐに近所の人達が着なくなった子供服や 使っていない子供用の自転車などを持って きてくれた。
自分の地元の人達をとても誇らしく思う。


写真8 立派な自転車を頂く

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